生まれ変わり
扉を2枚持ち帰った後、数日後に家の解体は始まりました。なんの縁もゆかりもない家であっても、家の解体を目撃するたびに切ない気持ちになります。家の歴史に幕が下りる最後の章。家を建てるときは施主がいて、建築家がいて、工務店がいて、ものすごい熱量と期待と希望に満ち溢れた始まりであるのに対して、解体業者さんは仕事として家を淡々と壊していく。当たり前のことですが、一気に崩れゆくその姿に心が揺さぶられる感覚に囚われ、しかし、その感覚も時間と共に薄れ、気がついたらその家の存在は私の記憶の中で、ふわっとした淡い影としてしか残らない。だから、こうやって書き留めることって大切なのかもしれません。
扉2枚は狭い当事務所から家具屋さんの倉庫に引き取られました。正直、再利用できるのだろうか・・・と心配だったのですが、家具として再利用をしてくださる角重の小島社長も、建具として再利用をしてくださるヨネザワの米澤社長もなんとかできる!とのご見解だったので、持ち帰ってよかった・・・と胸を撫で下ろしたことを覚えております。材はさくらでした。
扉一枚は家具として部分的に再利用いたしました。わかりますでしょうか。黒く塗りつぶした縦材4箇所が、あの扉です。家具屋さんは電線を通す仕様などの加工で大変だったと思いますが、美しく仕上げてくださいました。
そして建具が搬入されました。コンクリート打ちっぱなしの無機質な素材感の中に歴史と多少の汚れ(笑)が染みた扉が入ると不思議な化学反応が起きますね。取手もそのまま再利用。こちらの取手は堀商店のもので、今では売られていません。この扉の裏に小さな浴室があるとは誰も想像しないでしょう・・・
いただいたつまみ取手は我が家の家具に取り付けました。この形状のつまみは採用したことがなかったのですが、とても実用的で使いやすいです。真鍮だけど、白っぽいのはなぜなのか、、、こちらも堀商店の商品だったか、、、色々と謎は多いですが、その謎も含めとても気に入っています。
いかがでしたか。一見役に立ちそうものない古いものが新しく生まれ変わる姿を見てどう感じましたか。新しいものが好きな多くの日本人にとってリユースやリサイクルは、汚い、ダサい対象かもしれません。ただ、古びたものには歴史の証というような風合いや味があり、それは新品では決して手に入れることができないのも事実。すでに54年生きてきたこの扉と金物が新しい場所で新しい姿で次の50年も活躍できるかもしれないと思うと、私はなぜかワクワクいたします。そんなワクワクがみなさまにも届いていると嬉しいです。
扉再利用を可能にしてくださった山庄建設の安田監督、角重の小島社長、ヨネザワの米澤社長、そして職人の皆様には特に心より感謝申し上げます。
